プログラム概要

推薦のことば

米国の病理医協会CAP(College of American Pathologists)では、病理診断の精度管理の一環として"Performance Improvement Program(PIP)in Surgical Pathology"を行っている。このプログラムは、参加者は年4回、毎回配布された10症例の組織標本をみて病理診断をつけ、添付された問題に解答してその結果を返却する。その後、症例の解説書が送付されてきて、自分の診断の正否と鑑別疾患との鑑別のポイント、最新の知見が勉強できるようになっている。さらには、全世界の参加病理医の診断と比較して自分の実力がどの程度のレベルにあるかを投票の集計結果から知ることができるようになっている。

今まで、CAPサーベイ日本事務局(株式会社CGI)では、この米国のプログラムを安価に提供できるように年2回の形に変更し、日本語に翻訳された解説書付きのJ-PIPとして提供し、日本病理学会の病理専門医資格更新の単位として認められてやってきていた。残念なことに、日本病理学会認定から日本専門医機構認定の病理専門医資格更新に変更された際、生涯教育単位としての認定が得られなくなってしまっていた。否、誤って認定が得られなかったと認識されていた。この間に参加者数が減少し、米国の為替変動並びに解説書翻訳にかかる費用の高騰で、廃刊の危機に瀕することとなった。しかし、この度、この措置が誤りであることが判明し、日本専門医機構認定病理専門医資格更新単位として1単位(学術業績・診療以外の活動実績(学術集会等参加に該当))が認められることが確認された。そこで、低価格化と利便性が得られる手段として、翻訳、印刷・製本、配布を止め、on-lineでの提供を中心とする方法へと脱皮することとしたという。事前のアンケート調査では、若い病理医はバーチャルスライドでの検索に慣れている、移動中でも病理画像を閲覧したり解説書を読むなどの作業ができる方が良い、少々の英語であれば翻訳は必要としないし、今はグーグル翻訳に掛ければすぐに翻訳できる、世界における自分の立ち位置が知れるのはありがたい、などのご意見を頂いた。

これらを背景として、PIPが日本専門医機構認定病理専門医資格更新単位取得認定プログラムとして再確認された今、CAP日本事務局(株式会社CGI)ではJ-PIPについては廃止とし、通常の英語版(PIP組織標本スライド版 / PIPWデジタル画像版)での運用として継続すべきである、英語対応での混乱を避けるためCAP日本事務局(株式会社CGI)サポートにより申し込みができるようにする、必要なCAP Websiteの eLAB Solutionのログイン方式等の日本語資料の準備と今まで通りのガラス標本希望者への配布をおこなうこととするとの結論に達したと聞く。有難い話である。

筆者は、以前よりこのプログラムの参加者であり、現在も続けて勉強させて頂いている。また、我が国の病理診断医の育成に関するいくつかの取り組みに関わった者として、このプログラムは日本の病理診断の精度管理と病理医の育成に貴重な資料であり、有益な教材であると考えている。その意味で、このプログラムの継続を喜び、日本病理学会の学術集会や講習会参加者のみならず、これらに参加できない病理医や病理を勉強したいと考える臨床医その他多くの方へ推薦したいと思う。本プログラムに多くの方が参加し、その良さを実感しつつ生涯教育の一助としていただければと思い、ご紹介させていただいた。

真鍋俊明
滋賀県立成人病センター 総長
(本プログラム翻訳監修者)

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