総評

総評 (2010年 JPIP-B)

翻訳監修者 真鍋 俊明

今回の診断正解率も比較的高かったと言えます。低かったのは症例22と25でしょうか。

症例22は、軟骨芽細胞型骨肉腫の症例でした。34.6%の方が間葉性軟骨肉腫とされていました。間葉性軟骨肉腫では、もっと円形細胞が多くしかも密で、その中に結節状の成熟軟骨部が介在し、時に不整石灰化領域、明瞭な血管周皮腫様の構造(hemangiopericytomatous pattern)がみられます。この症例では、軟骨様成分の他に類骨の形成も認められます。そして、多角形細胞、好酸性で豊富な細胞質を有する細胞がみられ、多形性を示す紡錘形細胞へと移行していっています。この所見は軟骨成分が多くとも本質が骨肉腫であることを示唆していると言えます。

症例25は、サイトメガロウイルス感染による慢性絨毛炎の症例でした。59.6%の方が正解されていました。絨毛膜炎の中でもっとも頻度が高いのがサイトメガロウイルス感染によるものです。重症例なのでしょうか、好中球の浸潤、壊死や石灰化、線維化が目立ち、核内の好酸性封入体を有する大型細胞が認められます。一般に、明瞭な封入体の存在をみる頻度はそれ程高くはありませんが、本症例ではみられます。皆さんの配布標本にありましたでしょうか。ご確認下さい。フクロウの目と称されるようなCowdry type Aの封入体は明瞭ではなく、同定し難いかも知れません。一方、細胞質内の封入体も明瞭でした。核内と細胞質内の両方に封入体がみられるのがサイトメガロウイルス感染細胞の特徴です。原因不明の慢性絨毛炎では、免疫原性の病理発生メカニズムも考えられており、再発のリスクがあることから、その診断には感染症を徹底的に除外しておく必要があると思われます。

症例28は、髄様癌の症例です。大腸癌の中では得意な形態を示し、分化の低い形態を示す割には、通常の腺癌と比較してリンパ節転移は少なく、予後の良い腫瘍です。この概念と形態をしっかり理解しておきましょう。本腫瘍は、マイクロサテライト不安定性(MSI)経路から発生する傾向があるとされています。

副腎皮質腫瘍の良悪性の鑑別はきわめて難しく、"転移を認める以外悪性の基準はない"などと言われていました。勿論、多数の研究者が鑑別のために様々なパラメータを用いていたのも事実です。最近では、MedeirosとWeissの組織学的基準のみを使用した分類システムがよく使われています。解説書には、これをうまく説明していますし、類似の他腫瘍との鑑別点をまとめていますので、ご参照下さい。

「演習問題」を標本配布に併せて提示しました。標本をみて組織診断を付けるだけではなく、鑑別疾患や鑑別点、その疾患の特徴などの知識を整理して欲しいとの意図です。標本閲覧時に併せて勉強し解答されても良いですし、あるがままの知識で解答しておき、解説書を入手後にもう一度検討したり、解説書読破後に解答しても良いと思います。御自分のお考えに応じてご活用下さい。ただ、問題の内容を忖度し診断を考えることのないようにしたいものです。

いつもの繰り返しになりますが、生涯教育の目的には、よく経験する疾患を見誤らないこと、鑑別疾患を考え鑑別する癖をつけること、稀な疾患を理解しておくこと、そして提示された疾患に対して既知の情報を復習するとともに、最新の知見を勉強することがあります。学会などで行う症例検討会では、得てして稀な症例や引っかけ症例が多く提示される傾向があり、つい"当てもの"的になってしまいがちですが、このような態度は、生涯教育にあっては危険な面を含んでいるとも言えます。虚心坦懐に標本を見、考え、診断すること、解答を得た後には復習し新知見の獲得に励む態度が必要です。今回も、鑑別疾患や鑑別点を考えるヒントについて学べたと思います。

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