総評

総評 (2009年 JPIP-B)

翻訳監修者 真鍋 俊明

今回の問題では、出題者の意図とは異なった診断が多かったようです。否、逆に出題者の意図通りになったのかも知れません。鑑別疾患を考える上でのポイントや診断へのヒントを学ぶには良い症例であったでしょう。

症例22の腺房細胞癌は、内分泌腫瘍との鑑別が難しいことがあります。弱拡大で腫瘍全体がやや好塩基性に見えるものや結晶様構造物や核の偏在傾向、柵状配列を認める場合は腺房細胞癌の可能性を考え、検索する必要があります。

症例23での類内膜腺癌と転移性大腸癌の鑑別では、病歴の存在、両側性か否かの他に、多結節状であることや広範な壊死の存在とそれを縁取るいわゆるgarland patternが後者を示唆するヒントとなります。ただ、これらがないからと言って、後者ではないとは言い切れませんので、更なる検索も必要な場合があります。

症例24は、甲状腺癌の組織学的な幅の広さとその亜型に対する組織基準の厳密さについて考えさせる症例でした。篩状構造や桑実(morule)構造について復習しておきましょう。

症例25のα1アンチトリプシン欠損症は普段余り経験することはないので、ついつい見落としがちです。年齢の若い患者、肺気腫の合併、ウイルス感染の証拠の得られない肝硬変症で、細胞質内球状体が存在する場合は、本症を考えるべきです。

症例26では、マントル細胞リンパ腫を辺縁帯リンパ腫とされた方が多くおられました。細胞形態の認識と結節の構造の違い、pink histiocyteの存在を知ることが重要です。確認のためには免疫染色を初めとするその後の検索が必要ですが、その検索法を限定し、見落としをなくすためにも上記の注意点を考慮に入れての鑑別疾患の絞り込みも必要です。

症例28は難しい症例と思います。腫瘍が腎被膜内にあり、脂肪細胞からなる場合(特に本症例のように血管成分や明らかな平滑筋が無い場合でも)、まず、血管筋脂肪腫を考えたほうが良いと考えます。そして、鑑別のためにHMB-45やmelan-Aの結果、S-100の結果を知ると良いと思います。

いつもの繰り返しになりますが、生涯教育の目的には、よく経験する疾患を見誤らないこと、稀な疾患を理解しておくこと、そして提示された疾患に対して既知の情報を復習するとともに、最新の知見を勉強することがあります。学会などで行う症例検討会では、得てして稀な症例や引っかけ症例が多く提示される傾向があり、つい"当てもの"的になってしまいがちですが、このような態度は、生涯教育にあっては危険な面を含んでいるとも言えます。虚心坦懐に標本を見、考え、診断すること、解答を得た後には復習し新知見の獲得に励む態度が必要です。今回は、その上で鑑別疾患を考えるヒントについて学んだと思います。

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